
1時間くらいで戻るつもりだった、ちょっとした山歩き。
それがまさか、2時間半の大冒険になるとは……。
16時近くになると、曇り空のせいもあって、山の中はどんどん薄暗くなっていきました。
道は分からない。
どこへ進めばいいのかも分からない。
「もし17時になっても抜け出せなかったら、宿に連絡して助けを求めよう」
そう決めていました。
低山だから。
ちょっと歩くだけだから。
そんな油断が一番怖い。
低山だからといって、なめてはいけない。
そして、ひとりで山に入るなら、やっぱりスタートは午前中。
午後からの登山は、少し予定が狂っただけで、あっという間に夕方になってしまいます。
今回、何より心強かったのは、Kameちゃんとずっと連絡を取り続けられたこと。
写真を送る。
動画を送る。
電話で話す。
地図を確認してもらう。
長時間それができたのは、充電器を持っていたおかげでした。
あの状況でスマホの充電までなくなっていたら……。
考えただけでもゾッとします。
そして16時30分。
ようやく宿へ帰り着き、女将さんの笑顔を見た瞬間――
張りつめていたものが、一気にほどけました。
涙が出てきました。
女将さんは、いつもの優しい笑顔で、
「まずは、お風呂に入って、ゆっくりして!
夕食用意してるからね!」
その言葉が、もう本当にありがたかった。
温かいお風呂に入り、夕食の時間には女将さんに今日の出来事を思う存分聞いてもらいました。
怖かったことも、迷ったことも、Kameちゃんとの救出作戦も。
全部しゃべったら、ようやく心まで山から帰ってきたような気がしました。
安心した途端、どっと眠気がやってきました。
屋根がある。
温かいお風呂がある。
そして、眠れるお布団がある。
普段なら当たり前に思ってしまうことが、この日はひとつひとつ、たまらなくありがたかった。
無事に帰ってこられたからこそ笑って話せる、法華津峠の大ハプニング。
そして心に刻んだこと。
山は、低くても山。
無事に帰るまでが、山歩き。


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